2022年度 和光高校卒業式 校長式辞

第71回和光高校卒業式式辞

桜の花のつぼみも膨らみつつある春の日に3年生の皆さんは和光高校を旅立ちます。卒業生のみなさん、ご卒業おめでとう。そして、卒業生を今日まで見守ってきた保護者の皆さま、お子さんのご卒業、心よりお祝い申し上げます。

さて、皆さんが和光高校に入学したのは2020年の4月ではなく6月のことでした。1年生の4月・5月は学校に来ることが出来ず、新型コロナウイルス感染症の影響を受けての高校生活のスタートでした。入学式でどんな話をしたのだろうか、と振り返ってみると、トランプ大統領の「自分は戦時下の大統領だ」、「コロナウイルスとの闘いは戦争だ」という発言を引いて、協力すべき時に「戦争だ」と煽るのはおかしい、という趣旨の話をしました。そして、コロナのような危機の時には、個人と政治・社会との関係が露わになる、とも言いました。いくら個人的なことに日々没頭して過ごしていたとしても、誰もが政治に結び付けられているということです。

その後欧米ではコロナは一定の収束を迎えました。日本も恐らくそれに続くことになるのだと思います。他方で、ウクライナとロシアの間では本物の戦争が起きてしまいました。この点については、後で戻ってきたいと思います。

コロナ禍で高校生活を過ごさざるを得なかった皆さんには、私たちの社会がどのような問題を抱えているのか、歴史の証人である皆さんにはよく考えてもらいたい。そして、学校生活を振り返ってみれば、昼ごはんを友だちとおしゃべりしながらもっと楽しみたかったとか、行事だって制限なく自由にやりたかった、と思ったことでしょう。しかし、制限のある中でも皆さんは、既成の発想を超えて新しいものを創り出すことができた、と私は感じています。とりわけ文化祭のクラス企画は、割とお決まりだった内容から教室を使えないことにより様々な工夫ができたのでは、と思いました。具体的なことは、今日皆さんの手に渡るであろう、親和会広報部の校長インタビューの記事に載っているので見てください、

ところで、皆さんが高3生として過ごした2022年から23年にかけて、私たちは大きな歴史的な転換点を通過したのではないか、という気がしてなりません。言うまでもなく、ウクライナとロシアとの戦争は、第2次世界大戦後の国際秩序を揺るがす大きな出来事です。そして、その影響もあり、自衛のためには、軍備を大幅に増強して、敵基地攻撃能力も持てるようにする、という方針が昨年の12月政府によって決定されました。防衛費の大幅増も伴っています。歴史的な軍拡です。政府の文書を読めば、敵国として想定されているのは、中華人民共和国と朝鮮民主主義人民共和国、いわゆる北朝鮮であることは明らかです。敵基地攻撃とは、ミサイルなどが飛んできたら、それを飛ばす相手の基地を攻撃するということですが、日本は今まで専守防衛と言っていて、敵が攻撃した時に限って自国を守るために反撃するとしてきたのに、敵の領土へ攻撃をかけたら、全面的な戦争に直結するのではないでしょうか。

また、軍備を増強すると言っても、その相手が中国ならば際限無い軍拡競争になってしまうのではないか、現在の経済力で日本はついていけるのか、という論点もあります。かつて、米国との戦争の時、結局は経済力の差で敗戦に至った歴史を忘れてはならない、という指摘もあります。

このように、敵基地攻撃能力、防衛費の大幅増というのは大変な問題であるのに、果たして社会の間で議論は高まっているでしょうか。

もう一つ、私が転換点だと思うのは、経済的なことです。昨年の秋には1ドルが150円を超えて円安になるという事態が起きました。32年ぶりということですが、石油や食料を輸入に頼る国としては、様々なモノの値上がりに直結しました。円の価値が下がるのですから、当然のことです。また、日銀の総裁が代わり、これから金利が上がると言われています。長い間低金利の続いた国で、金利が上がり始めれば様々な経済的混乱が予想されます。先ほど、述べた防衛費の大幅増については、増税で財源をまかなうことも検討されています。2つの歴史的な転換には接点があります。

タモリというタレントさんがいます。私や保護者の年代の人たちには大きな影響を与えた人です。その彼が、年末の番組で「来年はどんな年になるでしょうか」と聞かれ、「新しい戦前になるんじゃないでしょうか」と答えていたとのことですが、私にも同じような感覚があります。先ほど「歴史的な転換点を通過した」と言ったのは、そのような意味です。

私たち和光の教員は、コロナ禍であっても授業を通じて、あるいはホームルームの場で皆さんに様々な問題を投げかけ、共に考えてきました。多くの人が自分の頭で考え、必要な行動をすること、そのことのみが「新しい戦前」の再来を止める力になるのだ、と私は信じます。

卒業生の皆さん、いよいよ旅立ちの時です。4月からの自由な、そして制限の少ない生活の中で、思いっきり翼を広げ青春を謳歌してください。同時に、困難が待ち受ける、今の社会が少しでも良いものになるように、共に頑張りましょう。

皆さんが進む道に幸多からんことを。改めて卒業おめでとう。 

 

2023年3月13日

和光高等学校校長 橋本 暁 


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