2022年度 和光高校卒業式 答辞

答辞


2023年3月13日。私達239名は3年間の高校生活を終え和光高校を卒業します。

初めに、来賓の皆様、教員の皆様、保護者の皆様、そして在校生代表の皆様。本日は私達の門出に参列していただき、誠に有難うございます。対面での卒業式が開催されました事を非常に有難く、嬉しく思います。この場をお借りして、卒業生代表として感謝申し上げます。

さて、思い返すと私たちの高校生活は、恐らく和光の歴史上初めてクラスが半分に分かれたまま始まりました。1年次に体育祭、クラス合宿が行えなかった学年です。

また2年次には秋ではなく春休みに研究旅行に行った学年でもあります。今日、初めてマスクをしていない顔を見た人もいるでしょう。

このように、「仕方がない」や「責める相手が居ない」などの理由で、人生の中でも大切な高校生活3年間の殆どで、多くの我慢や理想とかけ離れた生活を強いられてきたと思います。

だからこそ、私は悔しい思いが多かった。その一つを挙げるとすれば、交流が少なく、人の間に溝があるように感じたことです。最後まで自分を隠して、人の深くを知らないまま終わってしまう消極的な人が多いと感じました。

もちろん、初めからうまく行くとは思っていませんが、そう思うきっかけとなったのは、この学年が1,2年生だった時、「他学年と比べ落ち着いた学年で、静かでつまらない学年だ」や、「何を考えているか分からない学年、もっと楽しい学年が良かった」などという声を多数聞いたことでした。

そのような声もありましたが、私にとって、この学年は多くの人が静かなる個性を秘めた、ユニークな人ばかりであり、一言で言えば面白い人が集まった学年でした。

心からそう思っていたからこそ、執行委員長として ”多くの個性を引き出し、それに寄り添える活動が出来る組織” を率いたいと志願しました。

ここで、そんな私たちの学年の一部の特徴的な場面であり、また私が執行委員長をやってきて1番の成長でもある場面を紹介します。

それは、昨年5月に行われた今年度の体育祭において、3年ぶりに対面でのエンター復活が決まったにも関わらず、当日若干の雨によって中止が決まった後、実行委員会後の私に、この学年の唯一無二のムードメーカー達が複数人でやってきて貴重な意見をくれたという場面でした。端的に言えば、彼らは「少しの雨だから絶対出来る」という旨の訴えを私に投げかけてくれました。

もちろん、実行委員会を開き、方向性を定めた後でしたから、背を向ける判断をとれば、その場限りで主張を認めずに、意見ごと捨てることなんて容易でした。

しかし、その時の私は「彼らから逃げたら何かを失ってしまう」と思い、彼らを信じ、彼らの意見が決め手(のひとつ)となって再度実行委員会を開く決断をしました。

その結果、開催することとなり体育祭の中でも大きなイベントを無事に終えることが出来ました。

彼らの内の多くはその後、文化祭実行委員になり「外部の来校者・飲食企画・オンステージ」などの復活に大きく貢献してくれました。1,2年を含む多くの実行委員が文化祭に対して消極的であった中、彼らが声をあげ、彼らの、意見力や他人に影響されない、魅力的な長所が全校をも動かした瞬間でした。

私は1人の生徒として、また生徒会の代表としてそれら全てに居合わせていました。正直とても怖かった。昔の私なら逃げていました。でも逃げなかった。誰かから見たら小さな出来事ですが、私は何か大きな成長を遂げたと感じました。

今思うと、これが私にとって最も「和光らしい瞬間」でした。

初めて、自分とかけ離れた人の個性とぶつかった。今思うと、もっと色んな人の個性にぶつかって、自分をぶつけたかったと強く後悔しています。

皆さんは、自分を出せましたか? 皆さんは、誰かの個性とぶつかりましたか?

生徒会が用意出来る交流の場が充分に無かったことは本当に申し訳ありませんでした。

しかし、それ以外の皆さん自身が行動を起こせる場で「楽しくない」、「つまらない」と諦めていませんでしたか?

楽しめていないのは、つまらない理由は、楽しもうと、面白くしようと出来ていない自分がいたからではないかと思うのです。生意気な言葉だとはわかっていますが、そのまま黙っていて無駄にするのはあまりに勿体無いと常に感じていました。

皆さんが持つ素敵な個性が遺憾なく発揮された時、それはきっと自身だけでなく、周りの人も巻き込んで良い方向に向かうと思います。どうか逃げず、その唯一無二の個性を、良さを、隠さずにいて欲しい、そう願っています。

そして、この場で述べることではないかもしれませんが、どうしても父と母に感謝を述べさせてください。約4年前、いじめを受け転校した私を見捨てず、ここまで沢山のわがままを受け入れ、数え切れない迷惑をかけたのに、しっかり面倒を見てくれてありがとうございました。

何かのご縁で来た和光高校。

何を得て、何を失ったのか。

何に取り組んで、何に背を向けたのか。

今は少しぼんやりとしていますが、そのぼんやりした何かをくれた和光高校に携わる全ての方々と、通わせてくれた2人には、言葉では足りないくらいに感謝をしています。

極端な考え方で私を語れば、2年間も高校生活において大切な部分を生徒会に費やしてしまったのかもしれません。誰かから見れば、無駄で、しょうもなかったものかもしれません。

ただ、色々な人が居て、色々なことがあった中で、私は人生で初めて強い責任感を持ち、目の前の何かに常に真剣に取り組むことが出来ました。

立派では無かったかもしれません。かっこよくなかったかもしれません。

ひたすらに奮闘して得た手元にある力で、これから先、また何かでつまずいたら今度は自分で答えを見つけられるよう、頑張ります。

最後になりますが、

私が思うに、和光高校は自分らしさを見つけられる場所でした。皆さんが嫌いな自分も、好きな自分も、ぼんやり浮かんだ「らしさの片鱗」を集め続け、進んで行くのでしょう。

この卒業式は私があと数行話せば終わります。同時に皆さん自身で何かが始まることでしょう。この3年間、何を失ったのか、何に背を向けたのか、それぞれが何に取り組んで、何を得てきたかはここにいる皆さん自身が一番わかっていると思います。

またいつか、この3年間を経てそれぞれの道で今より何倍にも輝いた皆さんと、どこかで再会できることを心から祈っています。簡単には負けず、どうか「自分らしさ」を捨てずにいて下さい。

本当に、お世話になりました。

2023年3月13日 

卒業生代表 川邉佑介



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