2023年度 和光高校入学式 校長式辞


2023年度 和光高校入学式 式辞 


春の若葉が目に眩しいこの時期に、皆さんを和光高校に迎えることになります。新入生の皆さん、高校入学おめでとうございます。私たち和光高校の教職員は、みなさんの入学を心から歓迎します。そして、新入生を今日まで見守ってきた保護者の皆さん、お子さんの成長の節目を迎え、感慨もひとしおのことでしょう。お祝い申し上げます。


先ほど、和光高校の校歌をみなさんに聞いてもらいました。私は、和光の校歌はこの学校の教育理念を分かりやすく表しているな、といつも思っています。2番の歌詞では、自治の大切さをうたいあげ、3番の歌詞の結びでは、人権を守り平和を担っていく決意を語っています。ウクライナで戦争が続いている中、和光が「平和の砦」であるために、どのようなことが求められるのか、共に模索していきたいと思います。

では、1番の歌詞はどのようなことを伝えたいのでしょうか。みなさんの手元にあるプログラムにも説明がありますが、少し補足したいと思います。

アテナイとは聞きなれない言葉ですが、現在のギリシャの首都アテネを指します。当時のギリシャ語の発音から、アテナイと日本語で言うようになったようです。ギリシャとかアテネとかいう地名から皆さんは何を連想しますか。古代オリンピックを思い出す人もいるでしょうか。丘の上に立つ神殿を思い出す人もいるでしょうか。ギリシャという場所は、ヨーロッパの人にとって、そして日本でもそうですが、古代文明の発祥の地の一つでした。現代にまで影響を及ぼす哲学者や数学者を輩出しました。中学生の時、ピタゴラスの定理というものをみなさん習ったと思います。この定理の名前の由来になっているピタゴラスという数学者もギリシャ文明の中から出てきた人です。

ですから、アテナイ、ギリシャという固有名詞は文化・文明の象徴です。和光高校の校歌が自分たちのことを「若きアテナイ 我ら和光」と言っているのは、自分たちが文化・文明を担っていくという決意のようなものだと私は思っています。文化・文明を継承するには、「学ぶ」ということが不可欠です。高校の役割というのは、生徒が「学ぶ」ためにだけある訳ではありませんが、学びが高校生活の中心にあるのは間違いありません。学校で過ごす時間の中で、最も多くを占めるのが授業なのですから。そこで、「学ぶ」ということに関わって、この3年間でみなさんに身につけてもらいたいことを話したいと思います。

それは、一言で言えば「学び方のポイントをつかむ」ということです。世の中には、様々な学ぶべきこと、あるいは学んでおいた方が役に立つことがあります。しかし、限られた時間で全部を学ぶことはできません。そうではあっても「学び方のポイント」をつかんでおけば、高校を出た後でも自分で学んでいけます。

私は、2年生・3年生の選択授業で歴史の授業を担当していますが、歴史を例にもう少し具体的に述べてみましょう。歴史を学ぶというと、ある事柄が起きた年を覚えるとか、事件の名前を覚える、条約の内容を知っておくなど、どうしても知識を暗記するというイメージが強いと思います。これは、高校入試や大学入試と、そこをターゲットにした学校の授業や塾の悪影響としか言えません。しかし、歴史を理解する上で大切なのは、なぜそうなるのかという因果関係を理解すること、そして、とある出来事が今を生きる私たちにどう関係するかを意識できるか、の2つだと私は思っています。なぜそうなるのか、と考えることで単なる暗記から抜け出すことができ、今とのつながりを考えることで、過去の出来事である歴史を学ぶ意味が実感できるからです。歴史に限らず、他の科目でも何らかの学んでいく上でのポイントがある訳で、日々の授業を大事にして、その中から掴みとっていって欲しいと思います。

さて、3年間に及んだ新型コロナウイルスの影響はようやく終わりそうです。みなさんは中学校生活の3年間いろいろと我慢を強いられたことも多かったと思います。同級生の顔も最後の最後になってやっと分かったという経験を持つ人もいるでしょう。しかし、これからの3年間は、仲間の顔を見ながらコミュニケーションを深めて、様々な活動にチャレンジして高校の生活を過ごして欲しい。最初に、春の若葉が眩しく感じると述べましたが、みなさんも同じです。君たちは人生の春を生きていて、これから伸びていく存在なのです。思いっきり青春を楽しんでください。


2023年4月8日 和光高等学校校長 橋本 暁



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