第72回卒業式 卒業式答辞

 


 想いを文章に起こそうとすると、たちまち“卒業”を実感してしまい、筆が進まずにいます。長いようで短い、華の高校生活が終わってしまうと思うとなんだかうるっときています。

と言っている時間も無いので、心のうちをしっかりと文章に起こそうと思います。

 その前に、来賓の皆様、教員の皆様、保護者の皆様、今年は生徒会代表と有志の在校生の皆様、本日は私たちの門出に参列していただき、誠にありがとうございます。何事もなく、対面での卒業式が開催されましたことを非常に有り難く思います。ここ数年の状況を見るなり、このような形式も当たり前ではありません。非常に嬉しく思います。この場を借りて、卒業生代表として感謝の言葉を述べさせて頂きます。

 僕は高校からの和光生です。いわゆる外部生でした。しかし、この学校には中学から直接上がってきた人や、中には幼稚園からの和光生という人も少なくありません。入学したころを振り返れば、既にグループがあり、顔馴染の仲間がいる内部進学組は、私服に慣れず、初めてづくしの僕からしたら“脅威”でしかありませんでした。正直怖かったです。

 しかし、後々聞いて見れば、内部進学組も、同じような気持ちを持っている人が中にはいて、仲のいい友達とクラスが離れてしまっていたり、比率で言えば外部進学組の方が多かったりで、不安感にかられていたそうです。入学からある程度たった時に聞いた話だったので笑い話で終わりましたが、僕の心には深く響くものがありました。

 そこから先入観を持つことをやめたのです。

 その想いを持ち、僕は執行委員会に立候補しました。「環境に声を上げなくてはならない」、「コロナに奪われた青春を取り戻したい」一心でいたのです。「せっかくこの学びで得た友達や仲間へ何かしたい。役に立ちたい。」とずっと思っていました。行事やその他のイベントなど、組織としても挑戦を重ねた上、段々と思い描く高校生活を上手く取り戻せていました。

 しかし「一体誰のためになっている?」この疑問と葛藤が心の中に住み始めました。視野を大きく持ちすぎて、本当に大切なものを見失い始めたのです。

 執行委員会に入ったことで、周りの友達との交流が激減していました。行事の時ほんの僅かしかクラスにいられなかったり、執行委員会の作業に力を入れすぎてクラスのことが後回しになっていたり、その間に大好きな親友も辞めてしまったり、おまけに執行委員の作業も失敗続きでした。

 なんだかモヤモヤしていました。初めての感覚でした。

 そうにわかに感じていた矢先の三者面談で担任にこう言われたのです。「絵文、孤独じゃない?」と。

 最初はなんのことだかさっぱりわからなかったのですが、確かに自分の中で周りの仲間達と意識がどんどん離れていっている。そう解釈しました。きっと迷走している僕を担任は見抜いてくれていたのでしょう。

 結局自分の「誰のためになっているのか」という問いは、残念ながら答えに辿り着けませんでした。そしてこの正解のない問いを追い続けた結果“3年”が立ち、今“卒業”を目の前にしています。

 このように、人間の内なる部分を考えられる3年間でした。人と人とがぶつかり、そして高め合っていく、和光の自治だからこそ追求し続けられたと思います。2年前の入学式でお話ししましたが、“他者の理解や他者との共存。それ以前に自分自身を認める。そして理解する。”これが僕の高校生活で一番難しい学びでした。子どもには少し早く、大人になったら訳がわからないような、そんな複雑な感情を持てる“今”を大切にしたいです。正解に辿り着けなくとも、この考えていた時間が今の自分を形成している。そう捉えています。

 今日有志合唱で歌った“正解”も同じような意味が込められていると解釈しています。

 答えがある問いだけではない、和光だからこそ得られた経験でした。

 そんな一風変わった青春ができたこの場所は、僕が2年前に入学式で言った通り、まさに“ホグワーツ”のようでした。胸を張って自分の言葉としてそう感じています。

 みなさん、ここからそれぞれの進路に進み、新たな生活を歩みます。答えのある問いだけではなく、自分が自然と直面しているものに問いかけてみて下さい。きっとそこにあなたのこれからの青春が待っていることだと思います。

 最後に皆さんを信頼して、少々プライベートな話になりますが、一つ報告をさせて頂きます。僕は春から浪人生として1年間修行を積み直し、再度受験に挑戦することに決めました。僕は3年間道に迷ってしまい、今年のうちにゴールテープを切ってはならないと強く感じたのです。きっと和光で学んでいなかったら、“再度挑戦する”を選択することはなかったと思います。

 そして、この決断を嫌な顔一つせず受け入れてくれた両親に感謝の言葉を述べたいです。和光で生活する3年間、いやここまで生きてきた18年間。なんとかこうしてもがけているのも両親2人の存在があるからです。この間そんな2人にひどい言葉を投げてしまいました。

 ここで正式に撤回させてください。あなたたちは僕のヒーローです。僕という人間の生みの親です。そして僕という人間を作り上げました。僕は決して立派じゃない、誰からも憧れられない人間かもしれないけど、僕自身を誇りに思っています。だから尚更あなたたちを誇りに思っています。ありがとう。

 これが本当に最後になりますが、

 このような環境で3年間を過ごせたこと、素敵な仲間に出会えたこと、5組のみんな、執行委員会のみんな、エブバンのみんな、そして関わってくれたみんな、大好きです。全てに感謝しています。どうか皆さん健康にだけは気をつけてください。

 この先の長い道のりをともに歩み続けましょう。

卒業生代表 渡邊絵文


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