第77回 和光高等学校入学式 校長式辞
新入生の皆さん、今日この日、和光高校に皆さんを迎えることになります。
高校入学、おめでとう。私たち和光高校の教職員は、みなさんの入学を心から歓迎します。そして、新入生を今日まで見守ってきた保護者の皆さん、お子さんの成長の節目を迎え、感慨もひとしおのことでしょう。お祝い申し上げます。
高校入学、おめでとう。私たち和光高校の教職員は、みなさんの入学を心から歓迎します。そして、新入生を今日まで見守ってきた保護者の皆さん、お子さんの成長の節目を迎え、感慨もひとしおのことでしょう。お祝い申し上げます。
さて、今日は干支ということで、少し話をしてみたいのですが、保護者の方はご存じでも、新入生の皆さんには馴染みがない人が多いでしょう。少し説明したいと思います。文字保障のスクリーンを見ながら話を聞いてもらうと分かりやすいかもしれません。十二支というのは知っている人が多いかなと思います。ねずみどし(子年)、うしどし(丑年)、とらどし(寅年)と十二個続いていくものです。今年は午(うま)年です。みなさんは、寅年か卯年(うどし)生まれということになるでしょうか。この十二支に、十干(じっかん)というものを組み合わせて干支といいます。この干支というのは、日本では長いこと、明治期の半ばぐらいまでは年などを表すのに使われてきました。ですから、誰にとっても馴染みの深いものだった訳です。十干(じっかん)とは、甲(こう)・乙(おつ)・丙(へい)・丁(てい)・戊(ぼ)・己(き)・庚(こう)・辛(しん)・壬(じん)・癸(き)の10の要素からなります。この2つの組み合わせを先頭の甲、きのえとも読みますが、それと子(ね)年を組み合わせたところを最初にして、以下順に組み合わせたのが干支というものです。甲子園という有名な球場がありますが、これは干支の最初の甲子の年にできたから、甲子園なんですね。10個と12個の組み合わせですから、60年経つと一周します。60歳のことを還暦と言いますけど、これは干支が元に還るということにちなんでの表現です。
説明が長くなってしまいましたが、耳で聞いているだけでは、分からなかった人もいると思います。できれば、あとでちょっと調べてみればみてください。
今年の干支は丙午(ひのえうま)です。私は、実はこの干支の生まれで今年還暦ということになります。さて、奇妙なことがあるのですが、丙午の年に生まれた子どもの数は、明らかに前後の年に比べて少ないのです。その前のへび年に生まれた子どもは約182万、ひのえうまの次のひつじ年は194万人なのに対し、ひのえうまに生まれた子どもは136万人しかいないのです。不思議ですよね。これは実は当時あった迷信に基づいています。その迷信によれば、「丙午年生まれの女性は気性が荒い」とか、もっと酷くは「丙午の女性は夫を殺す性なり」とか言われていたのです。1966年のさらに60年前、1906年の丙午生まれの女性はその生まれというだけで縁談が破談になったとか言うことも結構あったそうです。
さすがに、今はこの丙午の迷信はもう影響力が無くなったと思います。そもそも今の若い世代の人はこの迷信を知らないでしょうし。私が今、この話を持ち出したのは、ひとがいかに根拠のないことに影響されやすいか、ということを皆さんに考えてもらいからです。
さすがに、今はこの丙午の迷信はもう影響力が無くなったと思います。そもそも今の若い世代の人はこの迷信を知らないでしょうし。私が今、この話を持ち出したのは、ひとがいかに根拠のないことに影響されやすいか、ということを皆さんに考えてもらいからです。
残念なことに、根拠のないことに簡単に影響されてしまうということは、現在でもあります。それを一つ具体的にあげるとすれば、日本にいる外国人に対するものです。ネットや場合によっては政治家までもが、外国人が生活保護で優遇されているという言説があります。生活保護を取り仕切る厚生労働省もそんなことはないと明言しているのですが、そのような偏見が広まっている。そして、ネットで広まっているということは、若者に拡がっているということです。そもそも、生活保護は何らかの理由で生活に困っている人たちに、人間として最低限の生活を保障し、自力で生活できるよう援助することを目的とした制度です。日本国憲法の第25条に「すべて国民は健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する」と定められていることに根拠があり、むしろ保護を必要とする人が制度を知らず、必要な援助が得られないことが多いことの方が貧困の問題として大きくなっています。
日本に限らず欧米諸国でも移民や難民に対し「彼らが我々の仕事を奪っている」という勢力が力を伸ばしています。国際化し、ボーダーレス化した社会の中で、様々なルーツを持つ人が国の中にいるという現象はどの国でも当然ですし、むしろそうでなければ社会が成り立たなくなっています。そこで起きている問題については、当然考えていかなくてはいけないことです。私たちが生きる社会には様々な問題があり、それに対処していかなくてはいけない。その際、事実と根拠に基づいて考えることができるというのは、本当に大切なことです、そのような考え方を、学びをこの和光高校で新入生皆さんに身につけて欲しいと私は心から願っています。
少し硬い話になってしまったかもしれません。式辞というより授業のようだったと感じた人もいるかもしれません。そこは、私は社会科の教師なので、その点に免じて許して欲しいと思います。
先ほど、今年、私は還暦を迎えます、と言いました。人生一周したとも言えるかと思いますが、振り返ってみれば、私自身にとって高校の3年間はかけがえのない年月で、あっと言う間に過ぎて行った時間でした。新入生の皆さんも、いろいろと楽しい経験をしながら、自分を成長させていってください。さぁ、今日から新しい一歩を踏み出していきましょう。
2026年4月9日 和光高等学校校長 橋本 暁
