シリーズ和光の自治② ~クラブ長の話し合い~
このシリーズは、そのイメージしにくい「和光の自治」の一端を不定期で紹介していこうと思います。
お昼休み、職員室を出てすぐの廊下に円になって何やら話し合っている生徒たちを発見。
彼らは体育館(第一体育館、第二体育館、小体育館)を使用するクラブの部長さんたち。
耳を傾けていると、活動場所と時間の調整をしていました。
話し合いの後に、よくよく状況を聞くとこの日の集まりは臨時で集まっていることが分かりました。というのも、来週からはじまる体育祭のエンター(競技とは別にクラス毎に行う出し物のこと)のリハーサルを行うために、「通常のクラブ活動の日に第一体育館を使用させてもらえないか」と体育祭実行委員会からお願いがあったとのこと。通常は、決まった日に次週の体育館の割り振りをクラブ長が集まって決めています。
なぜ、このような行事に関わる体育館の使用について、事前に教員によって調整が行われていないのでしょうか?
それは、体育祭が”生徒会行事”であると共に、日常のクラブ活動における体育館の使用割り振りも”生徒たちの話し合い”によって決まっているからです。学校が、「エンターのリハーサルはこの日のこの時間」と決めて、クラブ顧問がクラブ員に「この日は活動できない」と生徒に伝えればこのようなクラブ長同士の話し合いは必要ないはずです。
ですが、体育祭は生徒会活動なので、いつエンターのリハーサルが行われるかはエンターを運営するセレモニー係会(体育祭のための係の一つ)が中心となって決めていきます。そして、クラブ活動も生徒会活動の一部(生徒会費の一部がクラブ費として、クラブ活動を活性化するための備品購入費に充てられています)
よって、クラブ顧問が主導して活動場所のやりくりをするのではなく、各クラブ員の中から選出された部長が活動場所や時間を把握し、他のクラブとの調整をしていきます。特に、複数のクラブが使用する体育館は毎週の活動可能時間の中でどのように時間を区切って使用するかは話し合い等で決定していきます。
つまり、この臨時の集まりはすでに決まっていた「体育館割り」を改めて見直す必要が生じたからというわけですね。
セレモニー係会としてはエンターのリハは水曜日の第一体育館を使用したいとのこと・・・しかし、午前中で授業が終わる水曜日はクラブ員にとっては活動がロングでできる重要な日です。今後に控える大会や前後の活動予定を考慮しながら、改めてセレモニー係会からの要請に応えられるか、新たな体育館割りが可能なのかを考えました。結果は・・・
「その日は第一体育館を体育祭に向けたリハーサル使用に譲って、第二体育館と小体育館で割り振りをやり直す」でした。
「体育祭」も「クラブ活動」も生徒会活動の一部です。そこには、それぞれの目的があって共存しています。
運動系クラブだからといって、「体育祭を優先したい」わけではなく、自分たちのクラブ活動の方を優先したいと主張することも当然あり得ることです。
一方で、クラブ活動が成り立っているのは生徒会費(生徒会活動を行うためのお金)の一部がクラブ活動を支えていることも事実なので、体育祭における競技の審判を担うなど、体育祭の運営に欠かせないものを担っています。
このように「生徒会活動は多岐に渡るので、利害が一致しないことも当然ある」のです。
私たち教員は上記のような視点に立って、「生徒たちがお互いの事情を出し合い、調整する取り組み大切にしてほしい」と考えています。なぜなら、そういった取り組みが民主的な人格を養うことに繋がるからです。